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作り方今月俳句│歳時記 @ A B C D E F G H I J K│過去log@ A B C D

三省堂 「新歳時記」 虚子編から
季語の資料として引用しています。

二月の季語

春(はる)
立春(二月四日・五日)から立夏(五月六日)の前日までであ
るが、月でいふ場合は二月・三月・四月を春とする。三春は
初春・仲春・晩春の称。春九十日間を九春といふ。
春の旅・春の町・春の寺・春の人・春の園・村の春・島の春・
京の春等。
「春も早山吹白く苣(むさ)苦し」素堂
「山寺の春や佛に水仙花」也有
「雪の絵を春も掛けたる埃かな」子規
「海女の春磯は海の草繁り」誓子
「膝をける力めでたし孫の春」静子
「春の絵の枠とも野行く汽車の窓」友次郎
「ジプシーに占はせをり窓の春」素十
「筆を噛んでいまだ書かざる妹の春」虚子
広辞苑から。
はる【春】
(草木の芽が「張る」意、また田畑を「墾(ハ)る」意、気候の「晴
る」意からとも)
@四季の最初の季節。日本・中国では立春(二月四日頃)から立夏
(五月六日頃)まで、陰暦では一月・二月・三月、気象学的には太
陽暦の三月・四月・五月、天文学的には春分(三月二一日頃)から
夏至(六月二二日頃)までに当る。万一七「み冬つぎ―は来れど」。
「―が訪れる」
A正月。新春。
B勢いの盛んな時。得意の時。「わが世の―」
C青年期。思春期。「―のめざめ」
D色情。春情。「―をひさぐ」「―を売る」
二月は平均気温が一番寒い月ですが、暦の上では春となりました。
確実に、春がきていると言うことだと思います。
春の季語で一句。
「どことなくむずがゆしかな春の風」よっち

立春(りつしゅん)
節分の翌日が立春で、大概二月四日の年と五日の年と
二年づつ続けて来る。未だ中々寒いが、禅寺等では立
春大吉の札が門に貼られどこやらに春が兆す。陰暦に
よつた昔は立春即ち新年で、元日のことを今朝の春・
今日の春などといつたものであるが、今ではさういふ
言葉は元日の方に譲つておいて、単に春立つとか立春
とかいふべきである。
「何事もなくて春たつあしたかな」士朗
「春立ちてぺんぺん草の畑かな」禾風居
「春立つやしゞろ心の火桶抱く」年尾
「立春の衣裁つによき日なりけり」貞
「老衲火燵に在り立春の禽獣裏山に」 虚子
(老衲:年を取った僧の自称)
広辞苑から。
りっ‐しゅん【立春】
二十四節気の一。太陽の黄経が三一五度の時。春の始
め、太陽暦の二月四日頃。季・春
りっしゅん‐だいきち【立春大吉】
立春の日、禅家で門口に貼る符札の文句。季・春
そこで一句。
「立春の低気圧かな風強し」よっち

早春(そうしゅん)
春とはいへ暦の上のみで陽気が寒かったり、木の芽
も未だ伸びないといつたやうな、春未だ浅い頃のこ
とをいふのである。
「早春の流水早し猫柳」 泊雲
「早春の鎌倉山の椿かな」 虚子

春浅し(はるあさし)
春にはなったが、未だ春色の整はない頃のことであ
る。浅き春。
「病床の匂袋や浅き春」子規
「猛獣にまだ春浅き園の樹々」あふひ
広辞苑から。
春浅し
春になって間もなく、まだ春らしい気配が十分に感
じられない。季・春
そこで一句。
「梅の木や植物園は春浅し」よっち

舊正月(きうしやうぐわつ)
陽暦に対し、陰暦の正月を指していふ。農家等は
収穫その他の関係から、旧暦に依る地方が多い。
「山越せば舊正月の奥三河」 筧爽
「舊正やみな帰りゆく島の者」 峡川

初午(はつうま)

稲荷神社の大祭は二月と十月であるが、二月が重く
してある。初午は二月最初の午の日の御縁日をいふ
のである。京都伏見の稲荷神社の初午は最も盛大に
行はれる。沿道や境内には数百軒の出し店が並び、
土細工のいろいろな伏見人形を買つている。二月の
第二の午の日を二の午といひ、三番目の午の日があ
れば三の午といふ。
一の午(いちのうま)。午祭(うままつり)。
「初午や日の当りたる小豆飯」 すくね
「初午の行燈や藪に曲がり入る」 虚子

針供養(はりくやう)
一年中に折れたり曲つたりした縫ひ針を祀る行事で
二月八日に行はれる。此日は針仕事を休み淡島神社
へ参詣して損じた針を納めるのである。
針祭る(はりまつる)。針納め(はりをさめ)。
「片づけて子と遊びけり針供養」 つる女
「賃仕事ためて遊ぶや針供養」 虚子

奈良の山焼(ならのやまやき)

奈良の嫩草山(わかくさやま)を焼く行事で、毎年
もとの紀元節の日に行つて来た。雨や雪などの関係
で次の日曜に繰延べられることもある。夕方合図の
太鼓が鳴ると手に手に松明を振り翳して消防隊が一
斉に火を点ずるのである。当日は昼の間から太神楽
があつたり、蜜柑撒をしたり、花火を打ちあげたり
して賑はふ。この行事は、昔東大寺と興福寺の境域
について和睦して以来、毎年の例となつたものであ
るといふ。
「山焼の麓に組し桟敷かな」 つとむ
「山焼やみな鼻よせて神の鹿」 十夜

雪解(ゆきどけ)
降り積んだ雪も暖かくなると解け始める。春の日が
きらびやかに照つて、雪解雫(ゆきどけしずく)が
軒に煙りなどするのは印象深い。が、本来冬中雪の
ある国の現象で、一日二日降つて積つたやうな雪の
解けるkとにはつかへないのであるが、しかし今は
さう固苦しくばかり用ゐ慣らされてゐないやうだ。
雪解(ゆきげ)。雪解風(ゆきげかぜ)。
雪解水(ゆきげみず)。雪汁(ゆきじる)。
「古宮や雪汁かかる獅子頭」 釣雪
「雪解のさなかの庭に干蒲団」 牧笛
「雪解の雫すれすれに干蒲団」 虚子

雪崩(なだれ)
山岳地帯の積雪が春先気候の激変の為め下部が緩ん
で山腹を崩れ落ちる現象で、大きな響を立てゝ木を
折り石を転がし、風を伴ひ雪煙をあげ、実に凄まじ
いものである。そして時には家を埋め、交通を杜絶
せしめ、人命を奪うことなどがある。雪なだれ。
「堀おこす人の屍や雪なだれ」竹の門
「雪なだれ妻は櫨邊に居眠れり」素堂
「大雪崩して萬獄のこたまかな」覚人
「僧房の障子にひゞく雪崩かな」漾人
「大雪崩月は朧にかゝりけり」水竹居
広辞苑から。
なだれ【傾れ・雪崩】
@斜めに傾くこと。傾斜した所。
A(「頽れ」とも書く) 陶器の釉(ウワグスリ)が肩から流
れ下がっているもの。やきなだれ。
B(「雪崩」と書く) 斜面の積雪が崩れ落ちる現象。
表層雪崩と底雪崩とがある。季・春
そこで一句。
「迫りくる雪崩目にして阿弥陀仏」よっち

残雪(ざんせつ)
裏庭とか、藪陰とか、乃至は山の岩陰、樹蔭などに
幾日も幾日も消え盡さないで残ってゐる雪をいふ。
梅見に行つたり、野を焼きに出かけたりして、思はぬ
ところに残つた雪を見かけることもある。また麓から
春の暖かさにだんだん追ひあげられて行く遠い連峰の
残雪などもある。
残る雪。雪残る(ゆきのこる)。
「雪国の雪もちよぼちよぼ残りけり」 一茶
「雪残る汚れ汚れて石のごと」 たかし
「残雪の谷に暫く日当れり」 虚子

薄氷(うすらひ)
春先、薄々と張る氷をいひ、又薄く解け残つた氷を
もいふのである。残る氷。春の氷。
「解々て纔(わずか)に春の氷かな」紅魚
「あげてある柴漬にある薄氷」姿川
「薄氷たゝみよせ舟着きにけり」香葉
「薄氷の草を離るゝ汀かな」虚子
さて広辞苑から。
うすら‐ひ【薄ら氷】
(古くはウスラビ) 薄く張った氷。特に、春さきの氷。
うすごおり。うすらい。季・春。斎宮女御集「―に
閉ぢたる冬の鶯は」
そこで一句。
「薄氷の踏み割る靴や濡れにけり」よっち

冴返る(さえかへる)
少し暖かくなりかけたと思ふ間もなく、また寒さが
ぶり返して来ることをいふのである。
「三日月はそるぞ寒はさえかへる」一茶
「冴え返り冴え返りつゝ春なかば」泊雲
「冴返るも糞もなく寒き信濃かな」濱人
「冴返る障子閉めたる人形師」白李
「冴えかへるそれも覚悟のことなれど」虚子
さて広辞苑から。
さえ‐かえ・る【冴え返る】‥カヘル
@光や音などが非常によく澄む。また、冷えきる。新
後拾遺冬「しぐれつる宵の村雲―・りふけ行く風にあ
られ降るなり」。「冬空に―・る月」
A寒さがぶり返す。季・春。玉葉集春「―・り山風
荒るる常磐木に降りもたまらぬ春のあわ雪」
そこで一句。
「冴返るそんなこんなのこの日かな」よっち

春寒(はるさむ)
春が立つて後の寒さの謂である。餘寒といふのと大
体は同じであるが言葉から受ける感じが違う。
「年寄の腹立春の寒さかな」 也有
「春寒のよりそひ行けば人目ある」 虚子

餘寒(よかん)
寒があけてからの寒さをいふのである。春寒といふ
のとは心持に相違がある。
残る寒さ(のこるさむさ)。
「關の戸の火鉢ちひさき余寒かな」蕪村
「情なう蛤乾く余寒かな」大祇
「底たゝく音や余寒の炭俵」召波
「世を恋うて人を怖るる餘寒かな」 鬼城
「鎌倉を驚かしたる餘寒かな」 虚子

広辞苑から。
よ‐かん【余寒】
立春後の寒気。寒があけてもまだ残る寒さ。残寒。
季・春。「―がなお厳しい」
そこで一句。
「股引にらくだを着込む余寒かな」よっち

春の風邪(はるのかぜ)
風邪は冬が多いが、春になつても餘寒が厳しか
つたり、冴え返つたりするので、油断をすると
風邪を引くことが多い。しかし冬の風邪と違つ
て、春の風邪といへば何となく艶つぽい。
「春の風邪毛布累ねて病みこもる」金童
「春の風邪あなどり遊ぶ女かな」清三郎
「主婦日記怠りがちに春の風邪」春子
「化粧して気分すぐれず春の風邪」虚子
そこで一句。
「帰宅して飯もつくらず春の風邪」

猫の恋(ねこのこひ)
早春猫のさかるのをいふ。真の闇夜や、白梅匂ふ園
生、おぼろ月夜の垣根等を物狂はしく鳴き立てて妻
恋ふ猫が往き来をする。その頃の猫は人を怖れず雨
風に怯えず、碌碌家にもおちつかず、夜昼となく牝
を恋ひ歩き食事もろくにとらない。そして一週間も
十日もの後、憔悴して帰つて来る。
恋猫(こひねこ)。うかれ猫。春の猫。猫の妻。
孕猫(はらみねこ)。
「猫の恋へついの崩より通ひけり」芭蕉
「猫の恋やむとき閨の朧月」芭蕉
「うき友にかまれてねこの空ながめ」去来
「濡れて来し雨をふるふや猫の妻」太祇
「窓の月恋する猫の影ぼかし」石友
「恋猫のごうごうとして藪の月」石鼎
「吾が猫にそこら中なる恋敵」月尚
「出這入りに恋猫追ふや草の宿」虚子
そこで一句。
「恋猫や勝つて気ままの音散らし」よっち

白魚(しらうを)
長さ二・三寸、川や湖に多く棲む。体の色は透明で
目は黒点を置いたやうに鮮かである。白魚は味が極
めて軽く上品であるばかりでなく、白魚のやうな指
とたとへられるやうに、姿がすつきりとして美しい
ため愛好せられる。殊にその小さい内がよい。四ッ
手網や刺網などでも捕り、霞ヶ浦あたりでは船曳網
で帆舟が一ぱいだ。浅春の頃が多い。一・二月頃を
上り、三月を下りといふ。
白魚網(しらをあみ)。白魚舟(しらをぶね)。
「明ぼのやしら魚白きこと一寸」芭蕉
「白魚をふるひ寄せたる四ッ手かな」其角
「ふるひよせて白魚崩れんばかりなり」漱石
「白魚の青藻交りに汲まれけり」奇楓
「ぴちぴちと白魚枡に売られけり」奈王
「野菜くさぐさ他に白魚も少しあり」虚子
そこで一句。
「白魚舟満帆風を捕えをり」よっち

野焼く(のやく)
早春、野の枯草を焼くことである。うち晴れた穏や
かな日などに、野や畦や堤防などを焼いてゐるのは
よく見らるる風景である。これは害虫駆除にもなり、
その灰は肥料ともなるので行はれるのである。また
雑木や雑草を焼き払つておくと、蕨やぜんまい等の
生え出るのが早いためでもある。野火は野を焼く火
をいふ。草焼く。芝焼く。畦焼く(あぜやく)。
「古き世の火色ぞ動く野焼かな」 蛇笏
「遠野火や一かたまりに牧の馬」 白雨
「此の村を出でばやと思う畦を焼く」 虚子

焼野(やけの)
野焼をした後の野をいふ。黒い太い線を描いて断続
数町に亙つてゐることがある。川べりの茨・芒など
は半焼になつて残されてゐたりする、これを末黒野
といふ。
「しのゝめに小雨降出す焼野かな」蕪村
「うしろより雨の追くる焼野かな」大魯
「川越て鳥の見てゐる焼野かな」闌更
「赤き雲焼野のはてにあらはれぬ」四方太
「火は見えで黒く広がる焼野かな」虚子
さて焼野を広辞苑から。
やけ‐の【焼野】
焼けた野。早春、野火で焼いた野。季・春
そこで一句。
「離着陸爆音轟く焼野かな」よっち

山焼く(やまやく)
早春になると山を焼く。昼間遠く眺めると煙が立ち
昇つてゐる許りであるが、夕暮になつて来ると其が
赤くなつて来る。物淋しい感じを誘ふものである。
山火。
「山焼の明りに下る夜舟かな」一茶
「一山を焼けば夜々焼く四山かな」てい
「山焼を眺め休める床几かな」枝鳥
「山焼く火あまりはげしやたゝずめり」多津櫻
「山焼やぽつりぽつりと宵の雨」若爽
「四方より攻めるが如く樹海焼く」念腹
「裏山の焼ける火を見る砦かな」虚子
広辞苑から。
やま‐やき【山焼き】
春、草をよく萌え出させるために、山の枯草などを焼
くこと。奈良、若草山の行事はその代表。季・春
そこで一句。
「山焼の炎煙の渦や立ち上り」よっち

末黒の芒(すぐろのすすき)
草を焼いた後の黒くなつた、所謂末黒の野に角組
み或は萌え出でた芒をいふのである。万葉以来歌
などに多く詠まれてゐる。
焼野の芒。末黒野(すぐろの)。
「暁の雨やすぐろの薄はら」 蕪村
「すぐろなる遠賀の萱路をただひとり」 久女
「末黒野や笠縫邑と道しるべ」 子丑

麦踏(むぎふみ)
麦は芽を出すと、盛んに萌え伸びるもので、只素直
に伸びては株張りが悪く従つて収穫が少ないので、
一粒の種子から沢山の芽を出させる為めに、少し伸
びた所を足で踏んで置くのである。また冬期霜のた
め浮き上つたのを踏んで根を壓(おさ)へ鎮めるた
めでもある。麦を踏む。
「落日に足長く麦を踏みにけり」 佐海
「麦踏や背の子もしたる頬被」 木母寺
「風の日の麦踏遂にをらずなりぬ」 虚子

木の実植う(このみうう)
春さき二・三月の候、さまざまの木の実を山
に植ゑるのである。山に直植をする外に床蒔
をすることもある。種は初冬拾つて置く。
「我山に我れ木の実植う他を知らず」泊雲
「櫟植う我に十年の壽あるべし」奇北
「植うるもの葉広柏の木の実かな」虚子
そこで一句。
「いつの日か山持ちそこに木の実植う」よっち

猫柳(ねこやなぎ)
池塘や河畔・渓谷などに多く野生してゐる柳の一種
である。早春、葉に先だつて、幼い枝に灰白色の短
い毛を密生した長楕円形の花を交互につける。猫に
でも触れるやうにしなやかで可愛いい。
「猫柳にめぐり戻りて水の泡」閑山寺
「猫柳風に光りて銀ねずみ」花蓑
「温泉の川の湯気立ちこめて猫柳」岬人
「猫柳日に日に増せる雪解水」紅実
「猫柳湖畔の春はとゝのはず」播水
「猫柳水光りつゝ暮れにけり」北湖
「子を抱いて老いたる蜑(あま)や猫柳」虚子
広辞苑から。
ねこ‐やなぎ【猫柳】
カワヤナギの季節的な愛称。花穂の銀毛が猫を思わせ
るので、この名がある。季・春
そこで一句。
「猫柳吐く息白く月夜かな」よっち

片栗の花(かたくりのはな)

多くの山地の樹蔭などに生え、姫ぎぼしに似て稍々
長い二枚の葉の間から、四・五寸の花茎を出し、
早春、紫色六弁の姫百合に似た花をうつむけて咲く。
地下茎は採つて片栗粉をつくる。
「片栗の花咲く藪を拓きけり」 格
カタクリの花言葉は、「嫉妬・初恋・寂しさに耐える
・情熱」とのこと。
広辞苑から。
かた‐くり【片栗】
ユリ科の多年草。各地の山野に広く自生。早春に地
下茎から二葉を出す。葉は厚くて淡緑色を呈し、表
面に紫斑がある。春早く、二葉の間から長い花柄を
出し、紅紫色の六弁の美花を開く。花被片は外曲反
転し、下を向いて咲く。地下茎は多肉・白色棍棒状
で、澱粉を貯える。カタコ。古名、かたかご。
そこで一句。
「片栗の花校庭の片隅に」よっち

雛菊(ひなぎく)

菊科の小草で、葉の間から二・三寸の茎を出して頂
に各々一花をつける。二月頃から咲き初め、数月に
亙つて咲く。菊に似てゐて、色は赤・桃色など種々
ある。延命菊・長命菊などともいふ。
「病床や長命菊をゆかりにと」怒愛庵
広辞苑から。
ひな‐ぎく【雛菊】
キク科の多年草。ヨーロッパ原産の観賞用植物。高
さ一○センチメートル。葉はへら形。葉間から花軸をぬき、
白色一重の小花を頂生。改良された園芸種が多く、
大輪八重、白・桃・紅色など、春咲き。延命菊。
デージー。季・春
そこで一句。
「雛菊を摘みて遊ぶ娘かな」よっち

蕗の薹(ふきのたう)

蕗は雪解と共に円い球のやうな淡緑色の花芽を出
す、まことに早春の感じの深いものである。四月
中旬頃にもなるとそれが一尺くらゐに伸びて花を
開き、四・五日で散る。花は薄黄色の萼(がく)
の中に多数の蘂(ずい)がある。蕗の薹は摘んで
食用とする。
「蕗のとうほうけて人の詠かな」嵐雪
「蕗の薹や垣結う縄のひとまろげ」鬼城
「蕗の薹案内もなき庭あるき」躑躅
「蕗の薹ふみてゆききや善き隣」久女
「わが庵は蕗の薹さへ眺めかな」閑子
「凪くくれし志やな蕗の薹」虚子
広辞苑から。
ふき‐の‐とう【蕗の薹】‥タウ
(「蕗の塔」からか) 春の初めに蕗の根茎から生え出る花茎。
ふきのじい。ふきのしゅうとめ。季・春。
そこで一句。
「蕗の薹苦味この味摘みにけり」よっち

海苔(のり)
海苔の発生する浅海には海苔を養殖する海苔粗朶(のりそだ)
が立ててあり、潮の干満によつて出たり沈んだりする。
海苔舟はその海苔粗朶の間を漕ぎ廻つては粗朶がくれに舷を
傾けて粗朶についた海苔を採る。又岩についた海苔を干潮時
に掻取る人もある。採つた海苔は綺麗に洗つて小さく刻み、
海苔簀(のりす)に薄く漉いて干して乾かす。東京では大森
・穴守海岸から木更津方面にかけて盛んに採れる。関西では
和歌浦が名高い。発生期は一二月頃から四月頃まで。
海苔掻(のりかき)。海苔採(のりとり)。海苔桶(のりおけ)。
海苔干す。海苔干場。
「海苔掻くや小さな岩も一となすり」 たけし
「岩の上に傾け置きぬ海苔の桶」 虚子

梅(うめ)

寒気を侵して早春百花に魁けて咲くのと、花容に気品が
あり清香を放つところから、古来和漢の詩人に愛賞され
た。種類が多く、色から見れば紅・白・淡紅あり、形は
八重あり一重あり、大輪もあれば小輪もある。異名も多
い。野梅(やばい)は最も多く分布されてゐる梅で、正
しい五弁白色である。古来文学に現れたものは皆この野
梅である。関西では月ヶ瀬・賀名生・南部等の梅林が最
も有名であり、関東では熱海・水戸・青梅等が数へられ
る。
梅の花。白梅。臥龍梅(ぐわりゅうばい)。梅園。
「梅若菜まりこの宿のとろろ汁」芭蕉
「春もやゝけしきとゝのふ月と梅」芭蕉
「水鳥の嘴に付たる梅白し」野水
「かはほりのふためき飛や梅の月」蕪村
「みのむしの古巣に添ふて梅二輪」蕪村
「な折そと折てくれけり園の梅」太祇
「丘の梅けさ見し枝もなかりけり」一茶
「小僧皆士の子や梅の寺」虚子
うめ【梅】
(「梅」の呉音メに基づく語で、古くはムメとも)
バラ科サクラ属の落葉高木。中国原産。古く日本に渡来。樹
皮は黒褐色。早春、葉に先だって花を開く。花は五弁で香気
が高く、平安朝以降、特に香を賞で、詩歌に詠まれる。花の
色は白・紅・薄紅、一重咲・八重咲など、多くの品種がある。
果実は梅干あるいは梅漬とし、木材は器物とする。未熟の果
実を生食すると、アミグダリンを含むのでしばしば有毒。ブ
ンゴウメ・リョクガクバイなど品種多数。好文木(コウブンボク)。
季・春。万八「冬木の―は花咲きにけり」
そこで一句。
「紅白と並び競わせ梅の花」よっち

紅梅(こうばい)
紅梅は俗世間のものといふ感じがして、何となく親
しみがある。長い蘂を簪(かんざし)のやうに飾つ
て、あどけなく咲き装つてゐる紅梅の花にいかにも
娘らしい感じがある。等しく紅梅といふうちにも種
類はいろいろあるが、何れも白梅などより少し花期
が遅いやうである。
「紅梅や見ぬ恋つくる玉すだれ」芭蕉
「紅梅や人の若さの妬まるゝ」美智子
「近づけば紅梅の色あせてあり」富久子
「紅梅やかしは手のよくひゞくこと」三千女
「うすきうすきうす紅梅によりそひぬ」友次郎
「紅梅に雪かむさりて晴れにけり」長
「紅梅の莟は固し言(ものい)はず」虚子
広辞苑から。
こう‐ばい【紅梅】色
@紅色の花の梅。季・春。枕三七「木の花は濃き
も薄きも―」
A紅梅色の略。
B紅梅襲(ガサネ)の略。
そこで一句。
「紅梅の盛りを過ぎて青い空」よっち

鶯(うぐひす)
我が国の特産と称せられる。早春から鳴くので、春の訪
れとして古来詩に歌に詠ぜられ、春告鳥(はるつげどり)
の名がある。それで初音(はつね)といへば鶯の初音の
ことをいふことになつてゐる。又時として「けきよ け
きよ けきよ けきよ」と続けて鳴くことがある。鶯の
谷渡といふ。鶯笛は短い青竹の管で作つた玩具で、管の
上に同じ青竹で作つた小さな鶯をくつつけてある。指で
開閉しながら吹くと、鶯の鳴くやうな音色が出る。
黄鳥(うぐひす)。
「鴬や茶袋かかる庵の垣」芭蕉
「鴬の身を逆にはつねかな」其角
「うぐいすや茶の木畑の朝月夜」丈草
「低き木に黄鳥啼や昼下り」蕪村
「鶯の二度来る日あり来ぬ日がち」几菫
「鍬の柄に鴬鳴くや小梅村」一茶
「鴬や御幸の輿もゆるめけん」虚子
広辞苑から。
うぐいす【鶯】ウグヒス
@
@スズメ目ヒタキ科ウグイス亜科の鳥。小形で、
大きさはスズメぐらい。背面褐緑色、下面白く、
白色の眉斑がある。低山帯から高山帯の低木林に
至るまで繁殖し、冬は低地に移り、市街地にも現
れる。さえずりの声が殊によい。別名、春鳥・春
告(ハルツゲ)鳥・花見鳥・歌詠(ウタヨミ)鳥・経読(キヨウヨ
ミ)鳥・匂鳥・人来(ヒトク)鳥・百千(モモチ)鳥など。
季・春。万二○「春立たばまづ我が宿に―は鳴け」
A広義にはウグイス亜科の鳥の総称。一○〜二○
センチメートルの小鳥で、草木の葉の茂みを動き回って生
活する。世界に三百〜四百種あり、日本には約一五種。
A声のよい人。「―芸者」
B鶯茶の略。
C(隠語)
@(泣くことから) 葬式。
A(色から) 黄金。金側時計。
D串や箆(ヘラ)の形をしたもの。
@(女房詞) 狭匙(セツカイ)。
A香道で組香の包紙を刺し、または火加減を見るのに
用いる鉄串。
B冊子などを綴じる竹の串。
C帯などをくけるのに用いる竹箆。
E香木の銘。
そこで一句。
「鶯や里山にゐて姿なく」よっち

下萌(したもえ)
いつしか冬枯の中から春季は動いて、草が萌えつつ
ある。榻を移さんとすればそこに既に草が萌えてゐ
る。古筵(ふるむしろ)をとればそこにも青める草
がある、垣根にもさうだ、池塘にもそうだ、これを
下萌といふ。
草萌(くさもえ)。草青む(くさあをむ)。
「下萌や土の裂目の物の色」太祇
「まん丸に草青みけり堂の前」一茶
「下萌ゆと思ひそめたる一日かな」たかし
「石一つ抜けしあとあり草萌ゆる」泊雲
「草萌の障子硝子にうつるかな」青城
「春草は足の短き犬に萌ゆ」草田男
「下萌えてゐると思うて掃きにけり」子鴨
「枯るゝもの枯れ萌ゆるもの萌えそめし」孝子
「草萌の大地にゆるき地震かな」虚子
広辞苑から。
した‐もえ【下萌え】
人目につかないさまに芽が生え出ること。また、その
芽。季・春。続拾遺春「―急ぐ野辺の若草」
「下萌や大地の息吹始まりぬ」よっち

いぬふぐり

早春、未だ何の花もない、田舎の道や堤の到るところに、
瑠璃色の輝かしい小さな花をかかげて地に壙がつたやさし
い小草がそれであつて、中々可憐な花である。いぬふぐり
といふ名は其実が二つ接したやうな形をしてゐるところか
ら出たものである。
「菫より劣れる花や犬ふぐり」すゝむ
「自転車の娘が通る犬ふぐり」ひなを
「いぬふぐり囁く足をあとしざり」青畝
「歩く子に両手さし出す犬ふぐり」虚子
広辞苑から。
いぬ‐ふぐり【犬陰嚢】
「犬の陰嚢(フグリ)」に同じ。季・春
いぬ‐の‐ふぐり【犬の陰嚢】
ゴマノハグサ科の二年草。高さ約一五センチメートル。三〜四月
頃、葉腋に小さな淡紅紫色の花を開く。実(ミ)は扁円で、
縦に凹線があり、二個のように見える。名はこの実の形
による。イヌフグリ。ヒョウタングサ。テンニンカラク
サ。漢名、地錦。
そこで一句。
「いぬふぐり小さい声でこんにちは」

磯竈(いそかまど)
若布刈の海女のあたる焚火の囲ひで、磯焚火ともい
ふ。三重県志摩の漁村の風習で、十四・五人も一緒
にあたれるくらゐの大きさに、周囲を円く笹竹で丈
餘の高さに囲うたものである。入り口は東に向かつ
て小さく開ける。海女は四季をを通じて焚火をする
が、この磯竈は春寒に限る。
「潮垂るゝ海女がはせ来る磯竈」雪村
広辞苑から。
いそ‐かまど【磯竈】
浜に囲いを作り、火を焚くようにした海女(アマ)の休
息所。季・春
そこで一句。
「風もなく煙上がるや磯竈」よっち


若布(わかめ)
昆布に似た緑褐色の海藻である。全国の近海に産す
るが、関門海峡や加太浦或は房州西岬灯台付近など
は有名である。主に舟に乗り箱眼鏡で覗きながら長
い棹の先に小さな鎌をつけた若布刈竿(めかりざお)
で刈るのであるが、海女が鎌を腰につけて海底にも
ぐつて採るのもある。若布刈舟(めかりぶね)。
若布拾(わかめひろひ)。若布干す(わかめほす)。
干若布(ほしわかめ)。若布売(わかめうり)。
「草の戸や二見のわかめもらひけり」蕪村
「船底に切り逃がしたる若布かな」丈蘭
「としごろの娘二人や若布売」鬼城
「若布舟加太の波間に飯食へり」梅史
「加太の海の波のり舟ぞ若布刈」左右
「潮の中和布を刈る鎌の行くが見ゆ」虚子
広辞苑から。
わか‐め【若布・和布・稚海藻・裙帯菜】
海産の褐藻。わが国各地の海岸に生ずる。長さ約一メ
ートル。葉は扁平でその中央に扁平で厚い中肋があり、
その内側は羽状裂片、下部は柱状の柄となり、岩に付
着。春、茎の両側に厚いひだができ、胞子嚢を生ずる。
食用。にぎめ。めのは。季・春。万一四「磯の―の
立ち乱(ミダ)え」
「髪を見て若布を食べて神頼み」よっち


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