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編隊飛行

  目 次
第1節   概説
1 要旨
2 編隊各機の責任
第2節  一般要領
3 飛行前ブリーフイング
4 エンジン始動及び地上滑走
5 滑走路上でのラインナップ
6 離陸
7 離陸後の空中集合
8 上昇
9 レベル・オフ 
10 長機交替
11 クロス・アンダー
12 燃料点検
13 飛行中の空中集合
14 スピード・ブレーキの使用
15 降下
16 着陸
第3節  各種隊形
17 隊形の種類
18 基本隊形
19 てい形隊形
20 単縦陣隊形(トレール・フオーメーション)
21 疎開隊形(スプレッド・フオーメーション)
22 機動隊形
23 戦闘隊形
第4節  編隊緊急対処要領
24 編隊離陸中のアボート
25 編隊離脱





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第1節   概説

1 要旨
  編隊飛行は、戦闘機操縦者として不可欠な基本的能力である編隊手順及び操作要領を修得するとともに、編隊精神をかん養することを目的として演練する。
  編隊飛行に当たり、僚機として重視すべき精神要素は次のとおりである。
(1) 長機に対する信頼感
(2) 隊形保持の意欲
(3) 長機の行動に対する先行的判断と初動の発見
  この章においては、T−4で行う編隊飛行について、飛行前ブリーフイングから編隊としての一連の飛行要領、各種隊形、機動要領及び編隊緊急手順等の基本的事項について記述する。

2 編隊各機の責任
  編隊行動においては、編隊長の的確な指揮と僚機の適切な行動及び支援とがあいまって初めて編隊としての能力発揮が可能となるものであり、名機はそれぞれ次の責任を果たすことが必要である。
(1) 長機は、僚機の能力に応じた操作をもって行動し、索敵、課目の組立て等僚機の全行動を含め、編隊としての貴任を有する。
(2) 僚機は、長機の指示に従うとともに編隊内の他機に対して常に注意を払いながら、索敵を厳にし長機の行動を支選する責任を有する。


第2節  一般要領

3 飛行前ブリーフイング
  編隊長は、飛行前に綿密なミッション・ブリーフイングを行う。特に、航空機異常時の手順及び天候急変時の処置に関しては十分な説明を行う。
  僚機は、飛行前の説明や手順に関して疑問を残したまま飛行してはならない。

4 エンジン始動及び地上滑走
(1) エンジン始動
   エンジン始動は、飛行前の説明で指示されたとおり行うが、通常、指示された時刻又は長機の無線による指示でエンジン始動する。各機が近くに駐機されている場合は、手信号によりエンジン始動することもある。
(2) チェック・イン
   チェック・イン要領は、長機の指示に対し、編隊内の建制に従って応答する。
   例 「GOLF FLTGHT CHECK IN」
      「GOLF 2」「3」「4」
(3) 地上滑走
   地上滑走は、編隊内の建制に従って行う。
   誘導路上における左右の間隔は長機、僚機ともに誘導路中心線からそれぞれの側へ約15フィートとし、長機は風下側に位置するものとする。
   前後の距離は約2機長とし、エレメント間はFOD及びブラストを避けるため約5機長をとる。   
   僚機の地上滑走での参照点は、第2図のとおりである。
      
参照点    
1 内側メイン・ギアつけ根と内側スタビレーター後端
2 尾灯と外側エンジン・ノズル外端
            第2図  地上滑走の見え方及び参照点(前席)  

(4) 周波数変更
   地上滑走中に所定の離陸前点検を行い、長機の指示で離陸のためのチャンネルに切替える。チャンネルの切替えは、すべて長機の指示で行う。切替え後にチェック・インできないときは、切替え前のチャンネルに戻り長機の指示を待つ。

   例 「GOLF FLTGHT LET's GO CHANNEL 2」
      「GOLF 2」「3」「4」
     チャンネル移行後「GOLF l」「2」「3」「4」

5 滑走路上でのラインナップ
  滑走持上でのラインナップは、機数、風の方向等により編隊長が決定する。通常2番機は第1旋回の内側、4番機は空中集合の外側に位置する。
   4番機は、自機のラインナップ完了を長機に報告する。

   例 「GOLF 4 IN POSITION」
      「ROGER 1」

   2機及び4機編隊のラインナップの隊形は第3図のとおりである。

  
      第3図 2機及び4機編隊のラインナップの隊形 
         (第1旋回が左旋回の場合)

6 離陸
  長機は、僚機のラインナップ状況を見てエンジン・チェックの信号を送り、全機同時に点検を開始する。
  3番機は、第2エレメントのエンジン・チェック完了後、長機に報告する。


   例 「GOLF 3 READY」
      「ROGER 1」

   長機はその後パワー増加のシグナルを送り、各機はパワーを約90パーセントにセットする。
   各エレメントの長機は、僚機の離陸準備完了を確認した後、リリーズ・ ブレーキのシグナルを送ってブレーキを離し、パワーをミリタリーにした後ミリタリー・マイナス2パーセントにセットして、通常の単機離陸の要 領に準じて離陸滑走する。
   通常第2エレメントは、第1エレメントから15秒後に離陸滑走を開始する。            名エレメントの長機は、僚機が完全に浮揚したことを確認した後、脚上 げのシグナルを送り、僚機は長機と同時に脚を上げる。速度170ノット でフラップ・アップのシグナルを送り、僚機は長機と同時に、フラップをアップにする。
   僚機は、浮揚後もラインナップと同じ位置を保ち、フラップをアップにした後、基本隊形の位置に移行する。
   長機は、パワーを約94パーセントに絞り、上昇速度を保持してバンク角30度で第1旋回を行う。第2エレメントは、第1エレメントの旋回と同時に旋回を開始し、空中集合を行う。長機は、空中集合が完了するまで  原則として上昇速度を保持する。

7 離陸後の空中集合
  第2エレメントは、第1エレメントが旋回する間に、速やかに集合を完了するよう行動する。
  第2エレメントは、上昇速度に達するまでは、通常離陸の姿勢を保持し、 その後、機高差を詰るように操作する。       
  空中集合間、常に長機との間に1機長以上の機高差を保つようにする。
   空中集合では、最初に第1エレメントの内側に入る。どの程度長機の前方に機首を向けるかは、長機との距離による。長機との距離によって接近率を調節し、安全かつ速やかに所定の位置につくよう計画する。
   長機から約1.000フィート、約30度後方の点をキー・ポイントとし、先ずこの点に到達できるように計画する。
  キー・ポイントは、第4図のとおりである。
  
      約30度:長機の主翼前縁ライン
      第4図 キー・ポイント

  長機に近づくにしたがい接近率を小さく、機高差を保持ながら外側の定位置につく。スピード・ブレーキを使用する必要があるときは、僚機 に対して指示を与えてから使用する。
   この段階で遅れたときは、極端なパワーを使って位置につこうとしては ならない。また、過度の速度で近づいているときは、2番機の2機長以上 後方かつ下方を通り、旋回の外側に出て速度を処理する。
   長機が離陸後直線飛行する場合は、「直線飛行中の空中集合」の実施要領に準じて行う。

8 上昇
  通常、長機はパワーをミリタリー・マイナス2パーセントにセットして  上昇する。

9 レベル・オフ              
  長機は所望の高度に達したならば、パワー減少のシグナルを送り、巡航速度のパワーに調節する。その後、計器点検を指示し、フィッシュ・テ ィルを行い、航行隊型をとらせる。
  3番機は、4番機こフィッシュ・テイ ルの信号を伝え、4番機は無線で応答する。  

  例 「GOLF FLTGHT LEVEL OFF CHECK」
     「GOLF 4」

  各機は、チェック・リストにしたがってイン・フライト・チェック (COFEチェック)を行う。点検完了後、編隊内の建制に従って、航空 機の状態及び残燃料を報告する。            

  例 「GOLF I NORMAL 30(3.000LDS)」又は
     「GOLF I NORMAL FEEDING」  (ドロップ・タンク形態)

  各機は、点検完了後、長機の指示により基本隊形に集合する。
  長機は、点検実施中は原則として旋回をしてはならない。僚機は、点検中長機に対する注意を中断してはならない。

10 長機交替
  長機交替は、通常、エレメント単位で行い、長機は次のように指示する。

   例 「GOLF FLIGHT POSITION CHANGE GOLF 3 TAKE LEAD」
     「ROGER GOLF 3」

   第2エレメントは、数フィート横に開き、パワーを加えてまっすぐ前に出る。僚機が長機の真横に来たときをもって交替の時期とする。
  長機交替中は、相互に目視しておかなければならない。

11 クロス・アンダー
   基本隊形において、僚機が長機の反対側へ移行する方法である。
(1) 2番機のクロス・アンター
   第2エレメントは、基本隊形のラインを保持しながら約2機幅開く。
    2番機は、約1機高の機高差及びノーズ・ティル・クリアランスがとれる位置まで後退し、長機の後方を反対側へゆっくり移行し、基本隊形の位置に占位する。
   第2エレメントは、2番機の位置変換完了後、てい形隊形に移行する。
(2) 第2エレメントのクロス・アンダー
   2番機に対するノーズ・ティル・クリアランスがとれる位置まで後退するほかは、2番機の場合と同様である。
   4番機は、3番機が前方に移行しはじめた後、3番機に対してノーズ・テール・クリアランスをとり、2番機と同じ要領でてい形隊形をつくる。

12 燃料点検
   長機は、燃料点検を行う必要があるときは、無線又は手信号で指示する。
   点検が完了したならば、各機は残念料を報告する。

   例 「GOLF FLGHT FUEL CHEK」
     「GOLF 1 20(2,000LBS)」
     又は「GOLF 1 FEEDING」(ドロップタンク形態)

 ドロップ・タンクが空になった機は、その旨を通報する。このとき、他機も併せて燃料を点検し、通報する。
    例 「GOLF 2 DROP DRY 35(3,500LBS)」
       「3 FEEDING」
       「4 DRY 34(3,400LBS)」
       「1 FEEDING」

13 飛行中の空中集合
(1) 旋回中の空中集合
   てい形隊形で飛行中、長機は、ビール・オフ・シグナル(通常3秒間隔)を送り、バンク角60度で180度水平旋回を行う。各機は定められたビール・オフ間隔で同様に180度水平旋回を行い、長機及び各前方機から適当な距離をとる。
    基本隊形に集合させるため、長機はロック・ウイングを行う。
    各機は信号を後続機に中継する。長機は最後尾機の応答を確認した後、ロック・ウイングのとき最初に翼を傾けた方向に、バンク角30度で旋回を開始する。
   各機は、速やかに空中集合ができるように経路を選定し、距離に応じて旋回の内側に移動する。
   キー・ポイント以降は、長機の約30度ラインをアプローチし、必要ならばパワーを使用し、2番機は常に内側に、3、4番機は外側に集合する。
   空中集合中は、前方機と約1機長の機高差を正確に保持する。ただし、3、4番機については、前方機との距離約500フィートに接近するまでは1番機からの機高差を保持する。
(2) 直線飛行中の空中集合長機は、速度又はパワーを必要に応じて通報し、2番機の占位する側を指示する。
   僚機は、距離に応じて増速し、各機毎、横間隔300〜400フィートを保持しながら、長機の後方約30度ラインの位置まで前進する。
  その後、30度ラインに沿って接近し基本隊形に集合する。
  距離約1.000フィートで、速度差約20ノット、長機の約30度ラインに出たとき、長機とほぼ同速度となるようにパワーを調節する。
  空中集合中は、前方機と約1機長の機高差を保持する。

14 スピード・ブレーキの使用
   長機がスピード・ブレーキを使用する場合は、無線又は手信号により指示する。

    例 「GOLF FLIGHT SPEED BRAKES・・・・・・NOW」
     (スピード・ブレーキ使用の手信号は、「第4節 日視信号」を参照)
    3番機がスピード・ブレーキを使用する場合は、次のように指示する。

    例 「GOLF 3 SPEED BRAKES ・・・・・NOW」

15 降下
(1) 降下
   降下は、通常基本隊形又は単縦陣隊形を用いて行う。
   長機は4機編隊の場合には、最少限パワー80パーセント、2機編隊の場合には最小限パワー75パーセントを使用する。  
(2) 降下点検
   長機は、降下点検(CAPTチェック及びFUELチェック)を指示する。名機は、チェック・リストに従って降下点検を行う。
 ア 基本隊形で降下中の場合
   長機は、フィッシュ・ティルにより僚機を航行隊形に開かせる。

   例 「GO LF FLIGHT DESCENDING CHECK」
      「GOLF 4」
 イ 単縦陣隊形で降下中の場合
   長機は、無線指示により僚機を第5図のように開かせる。

   例 「GOLF FLIGHT TRAIL RIGHT(LEFT)
      AND LEFT(RIGHT) DESCENDING CHECK」
     「GOLF 4」

   
    第5図 単縦陣隊形の降下点検(RIGHT AND LEFTの場合)

 ウ 報告
   各機は降下点検完了後、編隊内の建制順に航空機の状態及び残燃料を報告する。  

    例 「GOLF 1 NORMAL14(1,400LBS)」
       「2 NORMAL13(1,300LBS)」

   僚機は、長機の集合のシグナルで指示された隊形(通常、基本隊形)に集合する。

16 着陸  
(1) 編隊解散着陸
   イニシャル・レグに入るまでに、長機の指示によりビール・オフの反対側にてい形隊形を作る。
   イニシャル・レグで長機は、ビール・オフ・シグナル(通常4秒間隔)を送り、各機はこれを伝える。最後尾機は無線で応答する。
   各機は、指定された間隔でビール・オフし、通常の着陸のダウンウインド・レグに入る。
   接地は、全機滑走路の中心線上で行う。接地後滑走速度が十分減少したならば、前方機との間隔に注意しながら誘導路側に寄り、後続機に滑走路の片側を解放する。
(2) 編隊着陸
   編隊着陸は、通常、計器進入の手順、諸元に従って行う。
   僚機は脚下げ後、基本隊形よりやや前方かつレベル又はややスタック・アップして位置する。
   長機は、最終進入に入ったならば、飛行諸元を整え、できるだけパワーを安定させるように努める。
   滑走路に接近したならば、それぞれの側の中央に接地するように、進入する。
   長機は、通常の接地操作を行う。僚機は、隊形を保持しながら滑走持をクロス・チェックし、長機とほぼ同時に接地する。
   接地後、僚機は、直ちにパワーをアイドルにする。長機は速やかに機首を下げ、僚機の後落を確認後ブレーキによる制動を開始する。
   着陸滑走間、僚機が長機を追い抜く場合は、翼端間隔を保持したまま、その旨を通報して直進する。
     例 「GOLF 2 TAKE OVER LEFT SIDE」

   滑走路開放時に、長機が僚機の前方を横切る必要がある場合、僚機は十分に減速し、安全であると判断した時点で「GOLF 1 CLEAR」を通報する。

第3節  各種隊形
17 隊形の種類
(1) 基本隊形(ノーマル・フオーメーション)
   この隊形は、すべての編隊隊形の基礎となるものである。進出、帰投時に多く使用し、フィンガー・ティツプ・フオーメーションともいう。
(2) てい形隊形(エシエロン・フオーメーション)
   この隊形は、ビール・オフ、編隊解散着陸等を行う際使用する隊形である。
(3) 単縦陣隊形(トレール・フオーメーション)
    この隊形は、機動性を重視した隊形である。
(4) 疎開隊形(スプレッド・フオーメーション)
    この隊形は、索敵及び防御を目的とした隊形である。
(5) 機動隊形
    この隊形は、戦闘機動、索敵及び相互支援を目的とした隊形である。
 ア フルード・ツー
 イ ダス(DAS)
(6) 戦闘隊形(フアイティング・ポジション)
    この隊形は、戦闘機動等の長機の最大性能機動に対する追従が容易にできることを目的とした隊形である。
(7) その他の隊形
 ア 密集隊形(クローズ・フオーメーション)
   この隊形は、基本隊形から距離、間隔をつめた隊形で、濃い雲中飛行等で使用される。
 イ 航行隊形(ルート・フオーメーション)
   この隊形は、基本隊形から約2機幅開いた隊形で、航法、点検等に使用される。
 ウ 長単綻陣隊形(エクステンド・トレール)
   この隊形は、あらかじめ指示された比較的長い距離を保ったトレール・フオーメーションである。

18 基本隊形
(1) 水平直線飛行時の僚機位置
   基本隊形の僚磯位置は、長機の37度後方、翼端間隔6フィート、ややスタック・タウンした位置である。
   基本隊形及び参照点は第6図のとおりである。
   参照点
1 前席主翼前縁延長線上
  スタビ前縁先端が真横
2 後席
  翼端灯と後席操縦者のヘルメットを結んだ
  線上内側スタビ後端と尾灯が一線
3 機高差
  主翼端とインテーク三角マークの項点が同レベル
            
    
       第6図 基本隊形の参照点(前席)
  
(2) 旋回時の関係位置
 ア 内側旋回の場合は、水平直線飛行と同じ関係位置を保持する。外側旋回の場合は、僚機は水平線と長機の胴体下面が接しているところに位置し、直線飛行時の前後関係を保持する。急旋回においてはややスタック・アップし、前席操縦者の見える位置を保持する。
   通常の外側旋回の関係位置は、第7図のとおりである。
    
        第7図 通常の外側旋回

  イ 夜間及び計器気象状態の場合は、外側旋回においても水平直線飛行と同じ関係位置を保持する。
   夜間及び計器気象状態の外側旋回の関係位置は、第8図のとおりである。
      
         第8図 夜間及び計器気象状態の外側旋回

19 てい形隊形  
(1) 関係位置
   てい形隊形においては、名機は基本隊形と同様の距離間隔をとる。
    4番機は、2番機と同じ側に位置する。
   てい形隊形の関係位置は、第9図のとおりである。
      
          第9図 てい形隊形

(2) 隊形移行要領
   基本隊形からてい形隊形を作る場合は、長機は無線又は機体信号(デイップ・ウイング)で指示する。
   2(3、4)番機は、クロス・アンダーの要領で反対側へ移行する。
 ア 2番機側へのてい形隊形移行は、第10図のとおりである。

      
          第10図 2番機側へのてい形隊形移行

 イ 3,4番機側へのてい形隊形移行は、第11図のとおりである。
      
          第11図 3、4番機側へのてい形隊形移行

(3) 旋回
   てい形隊形における旋回は、通常浅い内側旋回を行う場合を除き、外側旋回を行う。
  てい形隊形での外側旋回は、第12図のとおりである。
    
         第12図 てい形隊形での外側旋回

20 単縦陣隊形(トレール・フオーメーション)
(1) 関係位置
   後続各機の位置は、前方機の約2機長後方かつ下方に後流を避けるだけの機高差をとる。
    
(2) 隊形移行要領
   単縦陣隊形への隊形移行要領は、次のとおりである。
 ア 基本隊形又はてい形隊形から移行する場合
   長機は、無線又は機体信号(ポーポイズ)で指示する。

   例 「GOLF FLIGHT IN TRAIL」

   第2エレメントは、外側後方に開き、やや機高差をとり、2番機のための間隔を作る。2番機は、十分な間隔ができたことを確認した後、単縦陣隊形の位置につく。
   第2エレメントは、2番機が位置についた後、3番機、4番機の順で位置につく。
   4番機は、長機に対し単縦陣隊形が完成したことを確認し、報告する。
    例 「GOLF 4 IN POSlTION」

  イ 疎開隊形から移行する場合
    長機は無線で指示し、原則として2番機側へ普通旋回を行う。各機は空中集合の要領で、2番機から逐次単縦陣隊形の位置につく。4番機は、長機に対し単縦陣隊形が完成したことを確認し報告する。
    例 「GOLF 4 lN POSITlON」  

(3) 単縦陣隊形における注意事項
   単縦陣隊形の操作中、長機は、170ノット以上の速度を保持して飛行しなければならない。また、最後尾機を除きスピード・ブレーキを使用してはならない。

21 疎開隊形(スプレッド・フオーメーション)
(1) 関係位置
   疎開隊形の関係位置は、第14図のとおりである。
   
          第14図 疎開隊形

(2) 隊形移行要領
   長機は、無線又は機体信号(フィッシュ・ティル)で指示する。
   最後尾機が応答を行った後、各機は速やかに所定の位置につく。
(3) 機動要領
   直線飛行中、僚機は、前方機の30度ラインを保持するよう努める。
   内側旋回の場合、2.3番機は、横間隔を俣持して20度ラインまでカット・インし、その後20度ラインに沿って長機との横間隔を詰る。
   交差時はノーズ・ティル・クリアランスを保持し、外側に出たならば、20度ラインに沿って所定の横間隔まで開く。
   外側旋回の場合、2.3番機は、横間隔を保持して40度ラインまでバック・オフし、バンク角をやや深めて内側に移行し、所定の横間隔まで開く。4番機は、3番機に対して2番機と同じ要領で機動する。
   直線飛行に移行したとき、長機に対する左右の位置の選択は、3番機に優先権があり、2番機は常に3番機の反対側に位置する。
   長機に対する旋回中の僚機の機動要領は、第15図のとおりである。
   
      第15図 長機に対する旋回中の僚機の機動要領

   疎開隊形における90度旋回後の名機の位置は、第16図のとおりである。
   
      第16図 疎開隊形における90度旋回後の各機の位置
 
22 機動隊形
(1) フルード・ツー隊形
 ア 関係位置
    フルード・ツー隊形における名機の関係位置は、第17図のとおりである。
   
       第17図 フルード・ツー隊形

 イ 移行要領
   フルード・ツー隊形を作るときは、長機は無線で指示する。
    基本隊形又は疎開隊形からフルード・ツー隊形への移行は、パワーを増し、横間隔を開きながら長機の20度ラインに出る。その後20度ラインよりも前に出る速度を逐次高度に変換しながら、所定の位置に移行する。
 ウ 機動要領
   2番機の内側旋回は、まず、横幅を保持するように旋回に入れる。
   10度ラインに近づいたならば、以後10度ラインに沿って長機に接近する。接近率を調節し、長機の前方に出るのを防ぐため、速度を徐々に高度に変換し、長機の直上を通過するよう機動する。
   長機が自機の胴体下に入った後も、長横の機動、自機との機軸差を確認しながら、外側へ移行する。横間隔をとりながら高度を速度に変換し、外側の所定の位置に移行する。
   2番機の外側旋回は、まず、横幅を保持するように旋回に入れる。
   30度ラインに近づいたならば、バンク角を深め必要に応じ機首を下げ高度を速度に変換しながら、速やかに旋回の内側へ移行する。横間隔をとりながら速度を高度に変換し、内側の所定の位置に移行する。
(2) ダス隊形
 ア 関係位置
   ダス隊形における各機の関係位置は、第18図のとおりである。
   
             第18図 ダス隊形

 イ 移行要領
   ダス隊形を作るときは、長機は無線で指示する。
   基本隊形又は疎開隊形からダス隊形への移行は、パワーを増し、横間隔を開きながら、長機の0度ラインに出る。その後、ラインを保持しながら所定の位置に移行する。
 ウ 機動要領
   旋回時は、通常ミリタリー・パワーを使用し、3〜4Gの旋回を行う。旋回はタック・ターン、インプレース・ターン及びクロス・ターンを用い、旋回終了後は速やかに、ライン・アプレストの位置に移行する。

23 戦闘隊形
(1) 関係位置
   戦闘隊形における僚機の位置は、第19図のとおりである。
    
         第19図 戦闘隊形

(2) 移行要領
   戦闘隊形を作るときは、長機は無線で指示する。
   原則としてパワーを変化させることなく、機動により速やかに所定の位置につく。
(3) 機動要領
   戦闘隊形における僚機の基本的機動要領は、当初旋回の前下方へ500フィートの距離まで前進し、その距離を保持して旋回の外側へ移行する。
   その後、徐々に上昇して、長機の翼と同一平面上に位置する。
   この機動間僚機は、所定の位置で長機のあらゆる機動に追従できるように操作しなければならない。


第4節  編隊緊急対処要領

24 編隊離陸中のアボート
  編隊離陸滑走中にアポートする場合の着意すべき事項は、次のとおりである。
(1) 故障機は、編隊内の他機に対して、異常の旨を無線で通報する。
  長機は、編隊内の僚機に対し、状況に応じ適切な指示を与える。僚機は、長機に故障が発生し、僚機に適切な指示が与えられない場合でも臨機応変の処置をとり、安全の確保に努めなければならない。
(2) 故障機は、残滑走路長及び後続機を考慮して、過度に早く停止しないよう配慮する。
(3) 滑走路に余裕がない場合は、ヒット・バリヤーの手順に従う。
(4) ヒット・バリヤー時、ドロップ・タンクの投棄が必要な場合は、後続   編隊の障害にならないように留意する。

25 編隊離脱
(1) 編隊離脱の原則的事項
 ア 各機は、次の場合編隊を離脱しなければならない。
  (ア)前方機を見失った場合
  (イ)編隊機動又は空中集合等で、そのままの操作を続けると、危検な状態になると判断した場合
  (ウ)緊急状態が発生し、編隊にとどまっていると危険な場合
 イ 離脱要償は、次のとおりである。
  (ア)前方機を見失った場合は、最後に見た前方機の飛行方向から遠ざかるように離脱する。
  (イ)前方機が見えている場合で、編隊を離脱しなければならないときは、下方かつ外側に離脱する。
  (ウ)2番機又は4番横が離脱したときは、他機は編隊位置にとどまる。
     3番機が離脱するときは、4番積は3番機に続く。
  (エ)緊急状態で離脱する場合は、エレメントごとに行動する。
(2) 雲中における編隊離脱
 ア 僚機の処置及び手順
    編隊離脱機は、直ちに無線で報告し、計器飛行に移るとともに長機の指示を受ける。
   この際、地形及び障害物を考慮し、安全な高度を維持する。
 イ 長機の処置及び手順
    長機は、僚機が編隊を離脱したことを知ったならば、飛行姿勢を変化させることなく一時的にパワーを増し、飛行諸元(機首方位、速度、高度、旋回の有無及び位置等)を僚機に知らせるとともに、適切な指示を与える。ただし、内側旋回の場合は、一時的に旋回を中止する。
    有視界飛行状態になったならば直ちに僚機に知らせる。

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